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争わない為の自社株対策の秘訣!

2023.09.01

経営者の方で自社の株価を正確に把握されている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?多くの経営者の方は、「知らない」「顧問税理士に任せているから」と言われるのではないかと思います。特に、後継者へ自社株の生前贈与を検討している方はしっかりと自社株対策を行っておかないと、後継者が大変苦労する可能性があるので、事前の対策と準備が重要です。そんな、自社株を後継者へ引き継ぐ際の注意点と対策をお話しします。

事例:創業者であるA社長が後継者へ生前に自社株を贈与

創業者のA社長は自社株を600株保有していました。株価は6,000万円(1株10万円)で、長男が後継者でした。他にも弟が2人いますが会社とは無関係です。過去の不況や世の中の変化で一時経営状態が悪化し株価も下がったため、自社株全部を長男へ生前に贈与しました。その後、時がたち、A社長が亡くなりましたが、長男が頑張って会社を盛り立てたおかげで株価が10倍に上がり、6億円になっていたとします。

遺言の活用

A社長は、生前に「子どもたちは仲が良いので、相続で争うようなことはないと思っている」と言われ、遺言は残されませんでした。A社長の遺産は3億円相当の金銭があり、長男と弟2人に、1億円ずつ分けようと長男が伝えました。しかし、弟たちは「兄さんは、14年前に親父から会社の株を贈与されたはず。その株は今では、時価6億円だから「持ち戻す」と、遺産の総額は9億円になる。そこで、三等分すると、一人当たり、3億円。しかし、遺産は全部で3億円しかないから、1億5,000万円ずつ俺たちがもらうよ」と言ってきました。14年前のことを言われるとは思っていなかったので、正直困りました。しかし、株価を6,000万円から6億円までに引き上げたのは長男の頑張りによるものであるため、到底納得はできませんでしたが、民法上、弟2人には権利があるため仕方ありません。このようなトラブルを防ぐには、A社長はどうすれば良かったのでしょうか。

それは、「遺言」を作っておくことです。A社長が生前に「私の財産はすべて長男に相続させる」と遺言を作成したとします。では、弟2人は1円も相続できないかと言うと、そうではありません。「遺留分」と言って民法で定められた最低限、遺産の6分の1を長男から金銭でもらえる権利を有しています。遺言があると、持ち戻すのは原則、相続開始前10年以内の贈与に限定されるので、14年前の自社株贈与は遺産に含めなくて済みます。長男は現在の遺産3億円のうち、6分の1の5,000万円ずつを弟2人に渡すことで終わります。遺言がある場合とない場合ではこれだけの違いがあります。遺言を作る際に弟2人にも遺留分くらいの財産は渡す内容にしておくことが、後々の兄弟間の争いを防止するためにも重要です。

また、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したとき」は10年以上前の贈与も持ち戻しされるので、「知っていた」か否かでトラブルになる可能性があるので注意が必要です。

遺言以外で対策は?

自社株の相続対策では、生前贈与だけでは不十分です。最低でも遺言は必須です。また、遺産の半分程度まででしたら預金で残すよりも、生命保険であれば原則、遺留分請求の対象外になるので、生命保険金の受取人を後継者に指定した生命保険の活用も検討してみるのも良いでしょう。ただし、保険金が遺留分の対象となるか否かは、保険金の額やこの額の遺産総額に対する比率だけではなく、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断されるので、注意が必要です。詳細は割愛しますが、「自社株の信託」という方法もあります。それと、大切なのが定期的に自社株の試算を税理士に依頼し今の自社の株価を経営者が把握し、必要な対策を講じておくことが重要です。尚、本日お伝えした内容は対策の一部です。実際の対策は個別に対策を組み立てることになります。また、法令の改正等により対策の内容が変わることもあるので、自社株対策は専門家へ相談しながら進めることをお勧めします。自社株対策や生前贈与、生命保険の活用などご不明な点があれば、当社へお気軽にご相談ください。

筆者紹介

杉山 健太郎
福岡相続サポートセンター
上級相続支援コンサルタント(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会)

上級相続支援コンサルタント、トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)として、税理士、司法書士、弁護士など各種専門家と連携し様々な相続問題の解決に向けてお手伝い。「相続」が「争族」にならない様に問題解決のコーディネータとして日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな問題解決、アドバスを提供できる様に心がけていますので、お気軽にご相談ください。

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